bP1 書物と実際





私が小学生のころ、家には月下美人の鉢があり、
乳白色の幻想的な花を咲かせていました。


その名の通り、月がでるころ…夜に咲く花なので、朝方にしぼんだ花を見ては、
咲いている姿を見損ねたことをがっかりしたものでした。

そんなある日、しぼんだ花を見ながら、

母が「これだけ花が咲いたのに夜しか咲かないなんて、見ることもできん。
なんとんしれん(どうしようもない・意味がない)。」と、
はき捨てるようにいいました。

そして、次の日か、その次の日だったか、母の心無い一言に腹を立てたのか、
その月下美人は、昼間に見事なまでにたくさんの花を咲かせていました。

家族がそこに集まり、「すごい、すごい、昼も咲くっちゃ(咲くんだ)!」と、
この一回だけの昼間の開花に驚いたのです。


最近、芝生や野菜・花の書物といった植物を対象にした本が
たくさん出版されています。


仕事柄、芝生の書物はある程度読むのですが、萌芽時期の温度や管理方法など、
内容によっては「おや?」と思うことが度々あります。

本の通りにやってみると意外とうまくいかないことがあります。

実際に芝生を植えてみて芝の状態を見て判断をすることのほうが、
案外うまくいくようです。

害虫の発生時期は、
夕方の芝生や葉の状態などを実際に観察したときにわかるものです。

施肥も葉の色やほふく茎の張り方をみれば、肥料切れがわかるはずです。

同じ植物でも、
土壌や日照、気象条件その他諸々の条件によって、その生育に違いがでます。

書物はあくまでも参考程度です。

月下美人は夜に主にさくけれど、その気になれば、
昼にでも咲かせることができるのですから、植物の力はすごいものです。

植物に関しては書物には書いてない事例が、実際にはたくさんあります。

分からないことは、植物に直接尋ねるほうが、近道ではないでしょうか。

植物と話ができる人が「(植物を育てる)センスがある人」ではないでしょうか。

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